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カスタマーサクセス大解剖(前編)

皆さま、こんにちは!テックタッチのCX(Customer Experience)チーム責任者の滝沢優と申します。社内ではtakkyと呼ばれています。
※自己紹介・CXチームについてはこちらのnoteもご参考ください!

カスタマーサクセス(CS)という言葉ができて10年足らず。ユーザーが継続利用することで売上を伸ばしていくSaaSの普及に伴い、活用の伴走者としてその重要性は増しています。私は、会社は違えどこの10年ずっとCSと同じ思想で仕事をしてきました。スタートアップ業界に入る前、BCGでのコンサルは究極のハイタッチコンサルと思いますし、東レでは10年超使い続けてもらう商材を扱う営業でしたので、いずれもCSに近い考えをする業務でした。

テックタッチ入社後の1年半は仕事柄、日本トップクラスにCSの方々と多く、そして深く話してきた自負があります。
テックタッチはCSの方が顧客に多いです。そのため弊社のCSMは顧客のCSMへのCSをしているので、CSの方が現状どのように動いていて、何に困っていて、何を目指しているか、を一番知っていると思っています。

まずは、私がこれまでお話をしてきた約400人の方々から学んだことを踏まえ、日本のCSの現状や課題についてまとめていければと思います。

※ちなみに、偉そうに書いていますが弊社のCSも絶賛悩み、困り中です。ハイタッチならではの個人スキルで頑張っている状況ですので、型にする、ということに取り組んでいます…!そういう難しいことが好きな方、ぜひお待ちしています!!


1. CSの最適解は、なぜ各社で異なるのか

CSの業務にはざっくりと分けて、1対1でガッツリとお客様に相対する「ハイタッチ」と、テクノロジーをベースとして1人で大勢のお客様を相手にする「ロータッチ&テックタッチ」の2種類があります。
CSとしては「自分たちのサービスを使っているお客様が成功するように支援する」という大きな目標がありますが、どうやって支援するのか、どこまで介入するのか、は各企業の事業特性や、組織フェーズによって、かなり異なります。

扱うプロダクトの単価にもよりますので一概には言えませんが、誤解を恐れずに言えば、SMB領域はロータッチで、お客さんの顔が見えにくい中でどうサクセスさせるか、がキーになります。
一方、エンタープライズ領域の場合は、ハイタッチで各顧客に深く入り込に、組織課題含めたディープな課題に向き合うことが求められます。

また、SaaSサービスの種類による違いもあります。一度導入し、オンボーディングさえうまくできればチャーンしにくいサービス(must haveの製品)もあれば、導入後アダプションフェーズもずっと価値を出し、顧客が”使いこなせる”状態を支援し、価値を証明し続けなければならないサービス(nice to haveの製品)もあります。

また、最近のSaaS業界ではリーンな経営、としてCSの効率性が非常に重要になっています。そのためには、例えはハイタッチCSをメインにしている企業でも、極力ロータッチ化し、もちろん顧客のサクセスは大前提としながらも、1:Nで対応できるところはしていこう、していかないといけない、という流れになっています。

※ちなみに、CS一人当たり生産性として非常にざっくりしてはいますが有効な指標になる「一人当たりARR」をとっても、日本は数千万円、USは2-3億円、がそれぞれ中央値というデータもあります。単価も違う、超巨大SaaSがUSには多い、CSが成熟している、という特徴ももちろんありますが、単純に生産性だけを見るとまだまだ日本は伸びしろ十分な状態です。

2. 限られるリソース

効率性を上げ、リーンな組織体制を理想とする場合、もちろんCSの人員確保も最低限に絞られます。一方、「CSの効率性を上げる」に対する最適解が一般に広まっていないため、各企業のCS担当者は「具体的に何をしたら良いのか」「自社のサービスに対する最適解は何か」「オンボーディングの完了は何で測ればいいのか」と非常に苦戦している状況です。結局模索し、忙しくなり、目の前のことに追われる、という現状かと思います。

そのためか、「他社の事例を聞きたい」「他社CSと繋がりたい」「学び合いたい」と、自社特有の課題を特定し、打ち手を立案することに悩んでいるCSの方の声をよく聞きます。

私の解釈では、世の中的に”CS”というものの意味や定義が曖昧で、各社違う認識をしていたり、同じ会社でもCS一人ひとりが違う認識を持っているということもよくあります。
サービスの性質や会社のフェーズによってやることも違いますし、そもそも(特に営業と比べると、)CSという職種ができたばかりで、「CS活動のマニュアル」が少ないことが、今日の「CS理想像を模索する旅」をしている方が多い理由だと感じています。
事業拡大をする上でのCSの効率化、質の向上に課題を抱えている企業のCS担当者が、この課題をどのように解決すればよいか、本記事を通して考察します。

※繰り返します。偉そうに書いておりますが弊社も模索中です!

3.どんな課題を持ち、現状どのように解決しているのか

我々が支援する際に寄せられるCSの課題でよくあるものは、「オンボーディングの品質を上げて効率を高めたい」「問い合わせを減らしたい」という二つです。
もちろんその背景に「解約率を下げたい」「採用が思うようにいかない、コストがかかりすぎる」「NRRが上がらない」という課題があるのは言わずもがなです。

CSにおいて重要なフェーズの一つが、オンボーディングです。改めてCSの定義・最終目標を考えると「お客様がサービスを利用し、成功した結果として契約を継続し、アップセルやクロスセルを喜んでしてくれること」が大きな目標になると考えます。

CSにおいて重要なフェーズの一つが、オンボーディング

そのミッションを実現するためには、一番最初の離陸(オンボード)のタイミングが重要です。お金を払って購入した瞬間というのは一番やる気のあるタイミングなので、その熱を維持したまま離陸し切り、価値を感じるところまで飛んでいけるかで、その後喜んで使っていただけるかどうかが大きく変わります。
逆に離陸に失敗してしまうと、その後どう頑張っても良くなりません。

プロダクト立上げ期はどうやるとうまくいくかが見えないため、立上げ期はオンボーディングに多くのリソースを投入することになります。その後、見えてきたものからメリハリをつけていくことができるため、オンボーディングの効率化ということが次の議論として出てきます。

BtoCの例を出すと、スマホアプリやソーシャルゲームなどでは30日間毎日の継続利用率を測り、ユーザビリティの良し悪しなどを見ていきます。KPIツリーを作ってみても、やはりオンボーディングの部分を改善することが一番ユーザの継続率に直結すると数字からも出ています。

個人的にはオンボーディングの究極の姿は、Nintendoのゲームだと思っています。誰もマニュアルを読まなくても操作の疑問がない。複雑な機能はプレイヤーが習熟してから出てくるので、初めから混乱することがない。
あれが画面上にある究極のオンボーディングだと考えていて、SaaSでもそれができたらベストですが、なかなかそうはなっていません。そこまで作り込むには相当な投資が必要となることも事実なので、そこをプロダクトに加えて人の力でカバーしていくことも、CSのオンボーディング活動の1つとなっていきます。

参考書にした書籍)「ついやってしまう」体験のつくりかた

一般的にBtoCの場合は、オンボーディングはユーザー自身でやっていただくことになるので、ほぼ100%プロダクトでカバーすることになります。
逆にBtoBの場合は人とプロダクトがミックスになっていることがほとんどです。そのトータル体験の作り込みを担っているのもCSですが、ユーザー体験(UX)を考える経験がない人がCSを担当していることも多いと思います。今後はプロダクトも含めた一体的な体験を作ることが課題となってくるため、UX、そして顧客体験(CX)をCSが考えるというのは、ますます重要になっていきます。

また、絶対的なユーザー数が少ない画面に対して、エンジニアのリソースを割いてプロダクトを改修、改善しにいくのかという議論もあります。10万人が必要な機能と、1,000人が必要な機能。仮に開発工数が同じだとしても開発優先度は前者のほうが高いため、管理画面のようなB2B機能の開発を貴重なリソースを使って行うべきか、はよく議論に上がります。


二番目の課題感、「問い合わせを減らしたい」というところですが、お問い合わせの種類にはざっくり分けてわけて2種類あります。

1つは非常に単純な質問です。「このボタンの意味がわかりません」や、「この文言はどういう意味でどういう定義なんですか」といったこと。
もう1つは人でないと対応できない内容のもの。「こういうことをやりたいが、システム上どうするか」「契約条件を確認してほしい」「解約したい」といったことです。

最初にも書きましたが、1つ目の内容についてはする側も、される側も誰も得をしません。お問い合わせの数が増えてくると、人をいくら雇っても足りないという状況に陥ってしまいますので、問い合わせ自体を削減していくべきだと考えます。
テックタッチでは画面上にガイドを導入し、わからない、を解消していくご支援をしています。できれば単純な質問、そして応用的な質問の中でもよくあるものについてはできるだけ画面上で対応していけると、お客様がよりハッピーになれるのではないかと思っています。
例えば「こんな使い方はできますか?」のような応用的な質問も、「こんな使い方があります」というようなものを画面上で散りばめておけばユーザーは問い合わせる必要がありません。

また、CSという役割が急拡大してきたがゆえに、需要に対して人材の供給が少なく、採用が難しいという課題感を抱える企業様も多いようです。採用して人を集めて組織を作っていくのは大前提としてありつつ、「このままのペースで増やしていっていいのか」という経営上の課題や、優秀な人を採用できないという課題もあります。
その場合はCSの生産性を上げていくことにより、採用の必要時期を遅らせるようにする、といった打ち手が考えられます。スタートアップ企業の場合、だいたいシリーズBぐらいのフェーズになると考え始める企業様が多い印象です。テックタッチはそんなニーズにもピッタリだ、とよく仰っていただきます。

4.カスタマーサクセス組織を立ち上げる際のポイントと注意点

カスタマーサクセスを立ち上げる際、SaaS提供スタートアップであればその必要性、重要性は明白であり、スムーズに立ち上がると思います。
その後、効率化、という点が論点として出てくるため、CS 3人目くらいを採用する時には型化による生産性向上、品質安定化に着手し始めたいです。人が増えると諸々仕事が増えてくるため型化が難しくなり、しばらく自転車操業になってしまう恐れがあります。
その意味で、自社はどのタッチモデルを採用すべきか、どのようなCSメニューを提供すべきか、というところを早めに考え、試行錯誤を回していけるとCS組織という点でもうまくいくと考えます。

逆に、既にプロダクトがある組織で、企画や営業部門とは別にCS部門を立ち上げる際は、より注意が必要です。
新規のCS組織のミッションは?既存組織との守備範囲の違いは?他部門との関わり方は?などを考える必要があります。
また、すでに顧客も多く、プロダクトも大きいことが多いため、スタート段階からある程度の品質が求められます。
その意味で、施策を始める前に自社、顧客をよく理解し、過去の施策やカスタマージャーニーを振り返り、ベストであろうものを出していく必要があります。
よって、社内の協力体制、知識、事前検討や顧客ヒアリング全てが重要となってきます。
一方、すでに過去の蓄積があり、うまくいっている顧客がいるということはスタートアップにはない利点です。

ではどのように施策を進めていくべきか、長くなってしまいましたので、後編で詳しく説明します。

長文にもかかわらずここまでご覧いただき、誠にありがとうございました。


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